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線形代数の半歩先

表題の「線形代数の半歩先」という本を購入しました。普段なら生成AIに質問しながら読み進めるところですが、その必要がないほど、非常に丁寧に書かれています。

生成AI時代には数学が大事だと考えているのですが、これはR&D部門にいたときの経験に関係します。

R&D部門にいたときに、世界的に有名な研究者と論文を読む機会がありました。

その研究者の論文の読み方は「数式を読む」というものでした。極論すれば「数式しか読まない」というものでした。

数式こそが技術であり、その説明文は数式の補足説明に過ぎず、全ては数式に書かれているというのです。

生成AIは自然言語で出力を出しますが、ひょっとしたら専門家にとっては冗長なのかもしれません。

少なくとも専門的な研究開発の分野では、数式で出力されるのが一般的になるかもしれません。数式で出力されても理解できるように、今から準備をしたいと思います。

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統計検定準一級

先日の東京大学の記事に刺激を受けて、自分も生成AIを用いて何か新しい学問を身につけたいと思うようになりました。

独学で学ぶときにハルシネーションが起こっているかどうかの判断が難しそうな人文系ではなく、数学的に説明されたものが良さそうだと思いました。

統計学ワークブック

データ解析のための数理統計入門

そこで、統計検定2級は合格済みなので、統計検定準1級を受けようと思います。テキストは上記の2つが良さそうです。

これらの本は解説が付いていますが、独学では行間が広くて厳しいので、生成AIの助けを借りて進めようと思います。

答えがあるものであれば、ハルシネーションが行っているかどうかの判断がしやすいので、理数系の専門書や教科書が良さそうです。

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生成AIで異分野に挑む

東京大学のHPで、「AIを引っ提げてやってきた大学院生」という衝撃的な記事を見つけました。 記事によれば、経済学をほとんど学んだことがない学生が、生成AIを活用して1年かけて研究を行い、その成果について経済学者に意見を求めたとのことです。

経済学研究科の小川光教授がその研究を評価したところ、専門誌に挑戦できるほどの高い水準にあったそうです。

教授が驚いたのは、その学生が経済学の専門教育を一切受けておらず、研究のアイデア出しから、先行研究のレビュー、データ分析、英語での論文化まで、ほぼすべてをAIツールとの対話と独学で1年間かけて行っていたという点です。

教授自身もAIを研究に利用しているそうですが、専門外の分野でAIの力を借りて高いレベルのアウトプットを出すAIネイティブの登場に、恐怖さえ感じたと率直に綴っています。

さらに興味深いのは、学生が教授に意見を求めた理由です。AIは彼の研究を「国際誌に通用する水準」と評価したものの、彼自身には経済学の素養がないため、その評価が正しいのかわからないと感じたからでした。

これからも素人が国際誌に通用する水準で異分野に挑む人が増えてくると思います。自分の専門分野の効率化にだけ生成AIを用いるのは勿体ないのではないでしょうか。

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LDA(Latent Dirichlet Allocation)の論文を読む

大学での研究のベースとなりそうなLDA(Latent Dirichlet Allocation)の論文を読み始めました。

LDAは、文書が生成されるプロセスとして以下の2つの確率分布を仮定しています。

  1. トピックごとの単語分布: 各トピックにおいて、どの単語が出現しやすいかという確率分布。(例:「テクノロジー」トピックなら「AI」「データ」「Apple」が出やすい)
  2. 文書ごとのトピック分布: 各文書が、どのトピックをどのくらいの割合で含んでいるかという確率分布。(例:あるニュース記事は「テクノロジー」70%, 「経済」30%)

LDAは、観測されている「文書」と「単語」の情報から、これらの背後にある「トピックごとの単語分布」と「文書ごとのトピック分布」を同時に推定します。これにより、文書がどのようなトピックで構成されているかを分析するというものです。

大雑把にはこのように理解したのですが、論文中の数式を理解して、数学的な意味から理解できるように読み込んでいきたいと思います。

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Perplexity Patentsで「生成AI vs 人間」の問題を解いてみた

株式会社イーパテントが知財情報フェアで主催した「生成AI vs 人間」という企画で第1回の出題を担当しました。

先日、Perplexity Patentsで特許情報が検索可能になったので、「生成AI vs 人間」で私が担当した第1回の問題を解いてみました。

問題文はそのまま貼って、出力の形式だけを限定しました(私の出題では、日本の登録特許だけを正解にしたので、日本の登録特許を出力するように指示しました)。

Perplexity Patentsに入力したプロンプトは以下の通りです。

甲社の開発部門では、厚底ランニングシューズの人気を受け、日本国内での販売を目標に独自開発を進めていた。今般、厚底ランニングシューズに特有の「ミッドソールに配置されたプレートが、つま先からかかとに至る長手方向に湾曲する」という技術について、先行技術調査(特許調査)を行うこととなった。

採点対象となる技術要件

(注)調査結果は日本の登録特許だけを出力してください。

•ランニングシューズであること
•ミッドソールにプレートが配置されていること(ミッドソールの内部又は外面に配置)
•プレート材料は不問
•プレートの少なくとも一部が長手方向に湾曲していること
•ミッドソールの厚さは限定しない(“厚底”でなくても可)
[(URL)
MAGIC SPEED 4](https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/running/magicspeed?msockid=353f9dedf6d66faa3067883af7616e4f)|https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/running/magicspeed?msockid=353f9dedf6d66faa3067883af7616e4f

結果は正解1件でした。知財情報フェアでも、生成AIと人間ともに正解が1件でしたので互角という結果でした。

結果を見るとミズノの案件が多数を占めていたのですが、人間側で参加した野崎さんと母集団が似ていると感じました。ミズノはミズノウェーブという技術を持っていて、それが多数引っかかったと思われます。

出題者としては、厚底シューズに使われるカーボンファイバープレートを意図していたので、関連の出願を多数行っているナイキが母集団に含まれていないとズレが大きいと思います。

Perplexity Patentsの結果には、ナイキの特許が1件も出力されていなかったので、出題者の意図とは違っている印象でした。

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知財AIエージェント

AWSの記事に「知財AIエージェント」を開発したという事例が紹介されています。注目すべきはその「実装の深さ」と「内製へのこだわり」です。

この知財AIエージェントは、特許庁のXML生データから独自の特許検索データベースを構築し、それを生成AIシステムと連携させています。これは、単にAPIを利用したり、プロンプトを作成したりする段階を大きく超えた、本格的なシステム開発です。

最大の戦略的ポイントは「内製化」

この複雑なシステムを外注に頼らず、内製することによる最大の利点は、システムの「ブラックボックス化」を排除できることにあります。内部処理がすべて把握できるため、なぜその結果を出したのかという「説明性」が格段に高まります。

知財業務において、判断の根拠やプロセスは極めて重要です。AIの回答を鵜呑みにするのではなく、そのプロセスを説明できることこそが、業務の品質と信頼性を担保します。

この事例は、AIを「使う」から「作る」フェーズへの移行を示しています。自社の業務プロセスに最適化し、かつ説明性を確保するため、今後このように高度なAIシステムを内製する企業は、ますます増えていくのではないでしょうか。

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統計検定2級に合格しました

社内で新人技術者が統計検定2級を受けさせられているのを聞いても、私も受験して無事に合格することが出来ました。
合格証はこちら。

2級と聞くと簡単に思えるかもしれませんが、公式HPには「大学の教養課程レベル」と書かれています。
検定種別一覧

数検2級が「高校2年レベル」となっていますので、統計検定2級の方が難しめに設定されていることが分かります。

最近の学校教育の数学では「データ分析」を教わります。中学校からデータ分析を教わり、高校レベルになると推定・検定も習います。現在の数学の教育を受けている人であれば、高校数学にプラスαするだけで合格出来ると思います。

しかし、「データ分析」を大学までに習っていない(下手すると大学でもまともに学んでいない)人にとっては、かなり難しい試験だと思います。

統計検定2級に合格することで、「統計学」の専門書がかなり読めるようになりました。また、知財分野のデータ分析が危うい分析をしていることも分かるようになりました。

現在は、統計検定準1級に向けて勉強中です。準一級は数学的にさらに高度な内容になり、とても楽しく学んでいます。

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サイエンスの時代

Googleの勢いが止まらない。Bardと呼んでいたころの生成AIは使えなくて、ChatGPTの独壇場かと思われたが、Geminiの登場でついに逆転しそうな勢いになってきた。これはGoogleが「サイエンスの時代」に向け、着実に力を蓄えていた証拠なのだろう。

この背景には、流行に乗るだけでは到達できない領域を見据えたGoogleの姿勢がある。あらゆる産業は高度化すると、その進歩は必然的に表面的な改善から、原理原則に基づく科学的なアプローチへと収斂していく。Googleもこれに則って「サイエンス」としてAI基礎研究へ深く投資し続けてきたのだろう。

多くの生成AIモデルの基礎となっているTransformer技術についても、Googleは特許権を独占的に権利行使する道を選ばず、技術力で真っ向から勝負したと考えられる。このオープンな戦略が、結果としてAI分野全体の発展を促し、Google自身の技術革新へと繋がったと言える。

テクノロジーカンパニーにおいては、優れた技術があってこその知財であり、知財だけで技術が伴わなければ真の進歩は望めないのではないだろうか。

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脱AI

日経新聞の2025年5月18日朝刊1面に「AIにあらがう将棋棋士」という記事が掲載されました。

将棋の世界ではAIがプロ棋士の強さを凌駕したとも言われており、多くの棋士がAIを研究ツールとして活用しています。そんな中で「あらがう」とはどのような意味を持つのでしょう。記事によると、AIが必ずしも高い評価をしない戦法を、トップ棋士があえて採用する動きに見られるようです。

これは、将棋界だけの話ではないように思います。昨日のブログで日本ではDifyのようなローコードツールが注目を集めている一方で、海外ではエンジニアが自らコードを書いてシステムを構築する文化が根強い、という話に触れました。AIが人間の知的な作業をサポートしたり、人間の能力を大きく超える成果を出したりする中で、人間がAIとどう向き合い、自らの専門性や創造性をどう発揮していくのかは、多くの分野で共通するテーマと言えます。

将棋棋士がAIに「あらがう」というのは、AIの評価値や推奨手を鵜呑みにするのではなく、そこに人間ならではの大局観や美意識、勝負の駆け引きといった要素をどう織り込んでいくか、ということなのかもしれません。AIの力を借りつつも、最終的には自分自身の頭で考え抜き、人間同士だからこそ生まれる深い読みや独創的な一手で勝負を挑む。そんな棋士の気概のようなものが「あらがう」という言葉に込められていると思います。

将棋界では、AI研究が深化して定跡が高度化し、膨大な暗記と研究時間が求められるようになっているそうです。徒労感すら感じさせることもあるといいます。そんな中で、AIの評価値だけを追い求めるのではなく、人間ならではの深い思考や、相手の心理を読むといった駆け引き、「自分自身の将棋」を貫こうとする姿勢が「あらがう」姿に現れているのかもしれません。

Difyのようなツールが「誰でも簡単に」を実現してくれるのも素晴らしいですが、専門家が深い知識や経験を持ち、AIが「正解」とするものに疑問を投げかけ、独自の価値を追求する姿勢が、これからの時代にますます重要になってくるのではないでしょうか。

AI技術が私たちの仕事や生活に急速に浸透していく中で、この「AIにあらがう将棋棋士」たちの姿は、人間がAI時代にどのように主体性を保ち、創造性を輝かせていくべきかヒントを与えてくれそうです。

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Difyが日本で流行っているのはなぜか

最近、本屋に行ってよく目にするのがDifyというローコードツールの本です。昨年辺りから流行りはじめたのですが、本屋でも新刊を目にするようになりました。

Difyが流行っているのは主に日本のようです。松尾研でDifyのYouTube動画を出していたので、アカデミアからの発信が注目度を高めたのかもしれません。

以前、RPAツールがブームになった際、日本がその主要な市場の一つであったという話があります。その背景には、ITの専門知識があまり高くない日本の人々でも比較的容易に利用できたためではないか、という見方がありました。

それでは、海外で何が流行っているかというと、Replitというコードを書いて実装できるプラットフォームが流行っているそうです。

GAFAの知財部はソフトウェアエンジニアが沢山いると言う話を聞いたことがあるのですが、「自分たちで作り上げる」と言う文化が根強いことが背景にありそうです。

日本ではエンジニアでも自分でコードを書かなかったりします。今では生成AIでコードを書くのが楽になっているので、自分で書いたコードを読んだ方がエンジニアにとっても良さそうな気がします。

このままDifyが流行っていくのか、それとも生成AIの進化によって「誰もがコードを書く」世界にシフトしていくのか。

非常に興味深いです。

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